出羽三山信仰

山伏の精神が息づく志津の宿で
 生まれ変わるような癒しを
変若水の湯つたや取締役会長/山伏
志田 靖彦さん

かつて多くの修験者が身を清めたと伝わる志津温泉。その地に佇む「変若水(おちみず)の宿 つたや」は、深い歴史と精神性を今に受け継ぐ宿です。宿名の「変若水」は、月山に祀られる月読命(つくよみのみこと)が持つとされる“若返りの水”に由来しています。豊かな自然の中で過ごす時間を通して心身を整え、まさに生まれ変わるような体験を提供しています。取締役会長の志田靖彦さんは、自ら山伏修行に励む修験者。その修行で得た学びや気づきを、日々の宿の運営にも活かしています。

志津温泉はかつて修験者が集い、山々を巡る「八方七口」の一つとして栄えた場所です。「ここは、湯殿山参りの人々を迎え、修験者をもてなしてきた歴史ある場所です。修験者の一人として、この地との縁を感じずにはいられません」と志田さんは言います。月山志津温泉の発祥は約400年前。湯殿山参詣の人々を世話する宿場町として栄え、「変若水の湯 つたや」もその一つとして誕生しました。「湯殿山参りのお客様を迎えるため、精進料理や山のものを用意することが必要でした。そのため、山菜料理が発展し、今に至るまで続いています」。冬は天然の冷蔵庫、雪によって山の恵みが長く楽しめるため、山菜やきのこが季節ごとにその姿を変えて料理に登場します。これらの山の恵みは、修験者の精神にも深く結びついています。

志田さんが山伏修行を始めたのは、還暦を迎えた59歳のときでした。もともと湯殿山と深い縁があり、「修行を始めたのは必然だった」と志田さん。若いころからではなく、人生の節目である還暦からの挑戦は、自分にとって“生まれ変わり”の機会でもあったと言います。修行では「自然を畏れ、敬う心」を学び、その教えを日々の暮らしや宿の運営にも活かしています。始めた当初は苦しいこともあったそうで「修行の一つである滝行では、初めて挑んだ際、水の冷たさに体が震えました。しかし回数を重ねるうちに、やがて水と一体になるような感覚を得られるようになりました」と振り返ります。修行を続ける中で、不思議と心が落ち着き、自分自身が変わっていく瞬間を実感。その経験から得た学びは、自身にとってかけがえのないものになったそうです。

出羽三山で修行を行う山伏たちは、「ざんげざんげ六根清浄」と繰り返し唱えます。これは、五感と意識(六根)の穢れを落として心身を清める修行の言葉です。さらに、その奥にあるとされる心の根底を「阿頼耶(あらや)」と言い、つたやのサウナの由来にもなっています。その名も「阿頼耶蒸け風呂(あらやふけぶろ)」。山を巡ることで心と体の原点に立ち返り、蒸け風呂の湯気に身をゆだねながら、生命の力を養い、それを日常へと持ち帰ってほしいという願いが込められています。「山のふもとから湧き出す『変若水の湯』と『蒸け風呂』を存分に満喫することで、疲れた体と心を癒し、新たな気持ちで日常に戻っていただければ」と志田さん。出羽三山の自然と祈りに包まれながら、自分自身を見つめ直すひととき。この宿で、そっと生まれ変わるような体験をしてみてはいかがでしょうか。

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